ゲーム業界生き残り

グランツーリスモの新作が、車のデータとコースのデータをネット販売するそうで、おかげでいろんな界隈でユーザーからものすごい反発を受けているそうだ。が、むしろボクはこの動きに賛成であり、というか GT4 のころからなんでデータの販売してくれないんだろうとさえ思っていた。多くの人が、これはソニーの金儲け戦略であり、ユーザーからお金を吸い上げるためにやっているという風にしかみられていないのは、正直ショックである。実際のところ、どういう意図でこれをやっているのかは分からないが、少なくともどこぞでみた記事を見る限り、上記のような意図は感じられない。


で、何で賛成かというはなし。要点は2つで、一つはゲーム業界のビジネスモデルとして新しい枠組みを提示している点、もう一つは1ユーザーとして見て今までコストの面で実現しなかった車やコースを納めてくれること、新車の登場や新コースの登場に対応してくれることが期待される点(してくれないと意味ないけど)。

その前に、けっこう有名(?)なはなしだが、ゲーム業界がいかに不健全かというはなし。これは駒場の授業で聞いたのかな。パッケージゲームは販売後1週間が山で、その間の売り上げが大半。次の週からは中古が出回るので、ほとんど売り上げはないそうだ。これはショッキングだ。大きめなソフトは、1年とかそれ以上の開発コストがかかるのに、売り上げが見込めるのはわずか1週間。売れるかどうかも分からない。しかも、ゲーム機の高性能化が開発コストの増大をうんで、どんどん利益がでにくくなっている。小さなソフト会社は、1本ミスっただけで倒産なんてこともあり得るというはなしも、うなずける。いろんな会社がネットゲームを作りたいのはもっともで、なぜかと言えばパッケージ以外の部分で売り上げが見込めるから。長く商売できるから。かけたコストに見合う収入を確保できないのは、会社として厳しい。

この話と何の関係があるか。このケースだと、データ作成に対してその対価を払うことになる。ソフト制作に対してお金を払ってもらうのではなく、データ制作に対してお金を払ってもらう。そして、高精度なデータを売りにしているこの製品にとって、そしておそらく実車、実コースからデータをとるという、十分工数のかかる仕事をしているわけで、それ相応の価値が認められる(少なくともボクには)。なので、そのデータを販売することは、みんなして不平を叫ぶほど不当なわけではない気がする。パラメタをちょっといじるだけでできる RPG のアイテムとは違うわけですよ。で、このように「パッケージ商品を売る」以外のモデルができることは、業界にとって非常に健全。なんでって、毎年毎年博打に出なくても収益は安定するし、仕事すれば売り上げが出て、ちゃんとした商売ができるわけだ。むしろ疑問なのは、ネットゲームに金を払うのに不平を言わないのに、データ作成に金を払うのに不平を言うのはなぜなのか。

それから、みんなどうして負の部分しか見ないのか分からない。残念ながらぼボクは車好きじゃないので、○○社の××がいいとか、そういう感覚はあまりないんだが、F1 好きとしては GT4 に全コース納めてよとは思ったモノだ。で、だ、「データとってきたいけど、工数係るもん。予算係るもん。無理だよ」といわれるのと、「データ取るのは工数係るから、代わりに 200 円払ってね」といわれるのとどっちがいいだろうか。販売の終わった商品に対して、修正パッチを当てるならともかく、ただで機能追加って、どこにそんな業界があるんだろうか(いや、あった。そういうのになれちゃったからいけないのか・・・)。

もちろん、もしこうした狙いがこの会社にあるのだとしたら、ゲーム中のミスなどでお金が発生してはならないし(これは何に対してお金を払っているの?)、金額に見合うだけの高度なデータを提供しないといけないし、そして従来できなかったデータ取りにチャレンジし(市街地コースとかリアルサーキットをもっと)、従来の5倍とか10倍とかのデータを用意してくれなければ納得は行かない。