毒をもって毒を制す

反社会学講座 (ちくま文庫)

反社会学講座 (ちくま文庫)

これはおもしろい。著者が自分で言うくらいおもしろい。世の中のマスコミとか「そういった人たち」の言及に対する批判なんだが、その批判の仕方がこれ以上なく絶妙なのだ。この本に対して、著者の非論理性を解く方も多分たくさんいるだろうが、それはこの本の趣旨が何もわかっていないことの表れだろう。その非論理性こそ、著者の狙いなのだ。


昨日も某有名ニュース番組でおかしな言及を見た。ちょうど親も見ていたのだが、そのおかしさに気付いてないようだ。グラフというのは、スケールと座標の省略をいじることでいくらでも印象操作ができるものなのだということを見せつけられた。しかし、科学的には今の言及はおかしいのだ、というような内容で本を書いてもおもしろくないだろう。なぜだろう。科学は、こうした社会学の問題に対して正しさを「保証できない」ことしかいえない。○○はいえない、○○は有意でない、○と×は相関があるが因果関係があることを保証できない。でも、著者は痛烈に批判して、反対の主張ができている。なぜか。彼は、まさに社会学者のする言及に対して、彼らと同じ「詭弁」で対抗することで、あなた方のいう「論理」を使えばその逆もまさにいえてしまいますよという、最高の皮肉によって社会学の言及の「正当性」を批判しているのだ。きっと彼は自分の主張こそが正しいなどとはみじんも思っていないだろうし、論理の破綻が随所に見られるがもちろんそのことに気付いているはずであり、そして肝心なのはそんなことはどうでもいいのだ。